鉄道巡検・旅行録

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【巡検録】エアポート・レール・リンク、タイ国鉄東線

この記事ではタイを訪れた際に乗車した、空港アクセス鉄道について紹介します。

旅の様子については【旅行録】をご覧ください。

【旅行録】タイ遠征① - 鉄道巡検・旅行録

エアポート・レール・リンク(Airport Rail Link)通称ARLはタイの玄関口であるスワンナプーム国際空港とバンコク市内中心部のを結ぶ鉄道で、タイを訪れる方は必ずと言っていいほど利用するんじゃないかと思います。

空港構内にある案表示です。漢字の「鉄道」の文字はありません。起点は空港で終点はパヤータイ(Phaya Thai)となっています。さっそくホームへと向かいます。

案内表示からは結構歩きましたが改札に到着です。改札に入る前に日本円をタイバーツに両替し、切符を買います。切符は海外によくあるトークン方式です。電子マネーなどのサービスはARLにはないみたいです。

改札でトークンをかざしてホームに降ります。駅名表には漢字が書いてありました。今回はトレードマークとして日泰友好旗をつけています。結構うけがよかったですが、治安が悪いところに行くときは観光客アピールになるのではずしましょう。

 

南北線のようなフルスクリーンのホームドアがついているのに加え、ホーム補助員のような方が一人エレベーター付近に立っています。

到着メロディなどの音もなく列車が入線すると一目散に補助員の方が車内に入ります。モップのようなもので床を掃除しながら折り返すお客さんがいないか見ているようでした。この様子はさながら東京近郊の終点駅のようです。スワンナプームはタイの玄関口のような空港で、そこへのアクセス鉄道ともなるとより一層力がはいているように感じます。

車両の正面は青と赤の二種類があり、両方とも側面はタイ国旗の色です。正面が二色ある理由は建設当初は各駅停車と急行を色で区別していたためです。急行列車は空港から終点のバンコク中心部までノンストップで、急行の中でも終点が違う二種類の種別があったらしく相当複雑な運行をしていたみたいです。具体的にはパヤータイから空港、マッカサン(Makkasan)から空港までの二種類だったみたいです。ですが終点までノンストップということで、パヤータイ行の列車はマッカサンに停まらないことが不便で不評だったみたいです。今ではすべてが各駅停車の運行がなされています。案内表示が二色だたのもその名残ですが、現在の状態でも駅間も広いですしだいぶ便利に感じます。タイの顔に恥じないようノンストップ列車を設定したかったみたいですが、変に複雑にするより単純なパターンダイヤの方が外国人の多い空港アクセス鉄道には向いていますね。この判断は好判断だと思います。

 

列車は空港駅を出発すると空港敷地内は切り通しをまっすぐ進みますが、直に高架に上がりタイ国鉄東線を跨ぎながら左にカーブします。カーブ直後に次の駅に到着します。この駅は国鉄東線との乗り換え駅になっていまして、ARLができるまでは空港アクセス駅として機能していた駅です。しかし列車本数が少なく空港らからも少し遠いためメジャーな移動手段ではなかったようです。今ではバンコク西側に行きづらいARLの補完として、ここで国鉄に乗り換えることで移動を円滑にする役割もあります。本数の少なさは健在なので時刻が合えばという条件つきです。この駅から国鉄東線とピッタリ並走するようになります。地図にするとわかりやすいです。

赤色いがARL関連で黒色が国鉄関連です。地図の真ん中らへんは赤と黒がほぼ重なっているのがわかると思います。それほどこの二路線は線路が接近しています。それもそのはずでARLはタイ国鉄に関連が強い子会社のような形で運営されているらしく、この路線も官営鉄道的色が強くなっています。この様子はさながら郊外へ延びる鉄道の複々線化に似ています。現状はARLは標準軌の複線電化なのに対し、国鉄狭軌の単線非電化と増線扱いにするには飛び越し気味な気がしますが、背景を知ると別路線名目の複々線化にしか見えません。この鉄道のリープフロッグのような現象がバンコクの鉄道の特徴と言えます。既存の路線の電化や複線化をせず新設してしまうという光景が進化の段階を飛び越したと考えることができると思います。

 

今回はタイ国鉄のマッカサン整備場を見学するためにマッカサンでARLを下車しましたが、土日はスタッフへの問い合わせができないらしく見学はできませんでした。そこから国鉄東線のマッカサンへは結構歩きましたので、同駅名ですがこの二路線を乗り換えるのはオススメしません。

国鉄マッカサン駅の様子です。ARLと一転して木造の古めかしい駅舎です。

駅名表も木造で表記にもARLとは対照的な様子を見ることができます。

極めつけは駅からの景色です。左上に見えるものがARLで正面の路線がタイ国鉄です。同じ場所を走る二路線がここまで対照的に描写される場所はなかなかないのではないでしょうか。バンコクの鉄道事情がこの一枚で一目瞭然です。

駅の待合室の壁にこのような張り紙がありました。今回紹介したような増線がバンコク周辺で活発に行われており、高速鉄道なども建設中なことがわかります。タイ版の通勤五方面作戦とでも言えますでしょうか。まさにバンコクの鉄道は進化の途中といった感じです。

乗車する方向とは逆方面の列車がきました。この列車はスワンナプームのさらに先アランヤプラテート(Aranyaprathet)など,、カンボジア国境へと向かう列車でした。東線は現在カンボジア国内の首都プノンペン方面へと線路は続いていますが、乗り入れる旅客列車はありません。貨物列車の方はというとそこそこあるらしく東線は重要な国際路線となっています。並行する二路線の特徴が全く異なっているので知れば知るほど面白いところです。

国鉄マッカサンの時刻表の写真があったので載せておきます。

しばらく駅で待っていると乗車する列車が来ました。

バンコク[クルンテープ(Krungthep)]駅行きの列車です。列車は乗車すると間もなく発車し、今度はARLの高架直下を進んでいきます。高架から見えた摩天楼の景色とは一転し、高架下のはスラム街のようなものが形成されていました。

線路脇の風景です。闘鶏が行われており、博打でもしているのでしょうか。因みにタイでも賭博は違法です。そのようなスラム的風景の中をしばらく進むと減速し、北線との合流ポイントに差し掛かります。この合流地点はタイ国内有数のジャンクション機能を有するデルタ線となっているのですが、ここは何度も通るので今回は画像のみとし、詳しくは別記事での紹介とします。

画像からでもわかるようにデルタ線を抜けると間もなくバンコク[クルンテープ]駅に到着です。ホームは欧州のターミナルに似た端頭式で、列車の目の前には国王の写真が飾られています。

バンコク駅という呼び方は地元の方にも通じる言い方ですが、正式名称はクルンテープでこれはタイの首都の一部をとったものです。実はタイの首都名はバンコクではなく、クルンテープ・マハーナコーン・アモーン・ラッタナ・コーシン・マヒンタラー・ユッタヤーマ・ハーディ・ロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニー・ブリーロム・ウドムラー・チャニウェート・マハー・サターン・アモーン・ピマーン・アワターン・サティット・サッカタッティヤ・ウィサヌカムプラシット(Krungthep Mahana Korn Amone Ratchasna Koshin Mahintara Yuttayama Hardy Rock Pop Nopparat Rarchastany Bryrom Udomra Chaniwait Maha Saturn Amone Piman Awatan Satit Sakka Tattiya Wisanukam Prasit)というそうです。意味は「イン神(インドラ、帝釈天)がウィッサヌカム神(ヴィシュヴァカルマン神)に命じてお作りになった、神が権化としてお住みになる、多くの大宮殿を持ち、九宝のように楽しい王の都、最高・偉大な地、イン神の戦争のない平和な、イン神の不滅の宝石のような、天使の大都。」です。バンコクという地名は大航海時代にここを訪れた欧州人の勘違いにより生まれた地名です。日本のじゅげむじゅげむみたいな話になってますね。ともかく駅の正式名所はクルンテープなのですが、地元の方からは周辺の地名であるフワランポーン(Hua Lamphong)駅と呼ばれています。東京駅のことを千代田駅と呼ぶような感じだと思いますが、同じ場所にある地下鉄の駅はフワランポーンなのでこちらの方が地元の方にはなじみ深いみたいです。地元の人と話す際はバンコク駅かフワランポーン駅のどちらでも伝わりますがクルンテープでは伝わらないので注意が必要です。

駅名表と自撮りです。これでようやく本日の目的地であるフワランポーンに到着しました。ARLのマッカサンから地下鉄に乗ればもっと早くついたと思うのですが、今回は整備場を訪問する予定だたのでここまで長引いてしまいました。

最後は立派なクルンテープの駅舎を紹介します。たなびいてる旗は国旗と王族の旗です。直近で王妃の祝日があったので王妃の色である青色の旗になっていて、駅舎にも王妃の写真がかけられています。このアーチのような形が特徴的なクルンテープ駅ですが、昨今の踏切による交通渋滞解消と路線近代化のために、この駅は廃止になりターミナルが北線のバンスー(Bang Sue)へと移る予定みたいです。廃止時期は未定みたいですが、現役のうちに身に来れてよかったです。皆様も是非お早めに訪れてみてはいかがでしょうか。